合同会社イシュメイル

飲食店の「協力金バブル」への違和感と対応

このままでは「ひずみ」どころか「ねじれ」が生じる

 

企業の倒産が歴史的な低水準になっています。

 

 

皮肉にもコロナ関連の政府支援の補助金(月次支援金、雇用調整助成金、飲食店向けの時短協力金など)が、倒産すべき企業を生き残らせてしまっているというのです。これをメディアでは倒産をおさえこむ「ひずみ」と婉曲表現しています(日本経済新聞1月10日付)。

 

たしかに、ここに至ってコロナ補助金を適正に調整すべき局面に入っているように思われます。

 

とりわけ蔓延防止措置に伴う飲食店向けの協力金については不公平感を訴える声が多いです。

 

「なぜ飲食店だけ?」という感覚が拭えないのです。

 

結論として、単純に1日あたりの最低金額を1万円程度に引き下げて、売上規模に合った柔軟な額の支給を可能にすするのはどうでしょうか。

 

 沖縄県における認証店と非認証店に生じた不公平感を背景に、認証店への協力金を増額できるよう要綱変更に踏み切ったのは是認できる判断です。まさに正しい朝令朝改です。ただ、未だ問題の全体を捉えたものではないことは否めません。先の年末に勇気ある歌舞伎町のバー店主が抱いた<ある違和感>は継続しているのです↓。

※認証店の協力金増額可能に 飲食時短営業、不公平解消へ

※参考サイト:協力金で「コロナバブル来た」一方で困窮する学生も…“お金の現場”で見る新型コロナと政治

 

営業の自由は、憲法22条1項で保障されています。その制約である以上、協力金そのものは必要です。ただ、現在は最低25,000円/日で、毎日の利益が5,000円に満たない家族経営の店舗、容易に人件費を調整できる業態などに過大な協力金が支払われているのも事実です。一般感覚に反するのは、問題となっている認証店と非認証店の違いではなく、金額そのものの不合理性ではないでしょうか。営業の自由への制約であるがゆえに協力金と名付けられていますが、実態は補償であり、そこに過大な利得が生じているという問題です。

 他方で、規模を有する飲食店、設備と従業員を抱える飲食店向けのメーカー・卸売業などに対しては、その営業をサポートする資源が少なすぎる実態が続いています。例えば、専門分化された業界において、業務系卸にとっては飲食店の営業時間短縮は営業の自由の事実上の制約に等しいです。公権力からの依頼が直接か間接かという形式の違いなのです。

 

日本共産党までも、酒場文化を守れとばかり不公平感のあるバラマキをそのまま是認しています。

※営業時間短縮に係る感染拡大防止協力金(令和3年10月1日~10月24日実施分)事務取扱要綱 

 

このままでは、雇用創出や事実上の営業実態が少ない企業の方が「協力金バブル」で逆に生き残り、老舗や将来性のある企業のモチベーション低下を招きます。「ひずみ」どころか「ねじれ」が生じ、モラルハザードの危険すらあります。

 

 

公平性の観点から協力金の最低金額を引き下げるべき理由

 

①アフターコロナへの新陳代謝を妨げてはならない

コロナ禍でも優良店は感染対策を徹底しながら、人が集まっており、その中で人数制限などの努力を続けています。実は多くの人が経験している事象で、フレンチやイタリアン、鮨店、居酒屋やバー、ラーメン屋でも変わらない真実でしょう。酷な言い方になりますが、現在の状態は社会における過剰性がコロナ禍により炙りだされた側面があります。コロナ後の社会のためには、過剰性を国民の税金によって積極的に保護すべきではないです。真に求められるお店に、適切な支援が届くよう祈りたいです。

 

②緊急性の喪失

国民の多くが、消毒や黙食といったコロナ禍での会食マナーを身に着けつつあり、食をめぐる一定の経済活動が継続することが予想されます。その意味で支払いの緊急性が失われています。また支払手続きに関しても過去の売上規模に基づく最低金額の引き下げであれば、仕組みを変更するわけでもありません(許容性)。

 

③復活しつつある自炊文化の後押しも

自宅でのリモート勤務と無駄な通勤時間が当たり前になることで、「自炊」文化が復活しています。専業主婦が可能であった時代のおふくろの味が、主体属性は別として、現代に蘇った家庭も多いのではないでしょうか。

 自炊の技巧の楽しさと旨さを知ると、今後の外食産業への評価はいっそう鋭いものになります。家で料理した方が素材もコスパも、味わい、健康面からも良いのではないかという疑問が生じるのは、当然です。

 むしろ素人の料理文化の理解や深耕を図る教育や売場支援へのシフトに新しい芽が息吹いています。食品スーパーはその出自からしてセルフ販売方式を採用しています。しかし、今後はこの機会を捉え、買い物支援のためプロの料理コンシェルジェを積極的に採用するのも方法でしょう。対話と指導のための専属の社員です。食品小売業にとっては、食文化再生のためのリアル対話拠点へと自己を変革する機会になります。そこおいて、リアルな人材の調理技術が活かされる場所があります。You Tube に任せておいてよいわけではなく、そうした新たな試みの方に、行政が支援する視点があればよいと思います。

 

幼いころに両親が離婚しました。初めての人のために料理したのは、高校生のときでした。仕事帰りで疲れ切った母親のため。何を作ったかというと「鶏むね肉のソテー」です。スーパーで安かったから鶏むね肉にしました。誰かがネットにあげていたブログを参考にしました。できた料理を母親が「美味しい」と言ってくれたのが嬉しかったです。…子どもの頃、母に「今日は煮込みハンバーグが食べたい」、「またカレー、ほかのがいい」と言って作ってもらった記憶があります。自分が料理するようになって、それがどれだけ大変で、愛情がないとできないことだとわかりました。自分でやらないとわからないんですよね。だから少しでも、自炊することを広めたいと思ってます。『リュウジ式 至高のレシピ』(ライツ社)おわりに より

 

 

 

ひろゆきさんも自炊を推奨しています。

関連情報

健康機能性に基づく魚食文化の創造再生 | 合同会社イシュメイル

合同会社イシュメイル

「合同会社イシュメイル」は、魚食の健康機能性を軸とした食文化の創造再生を理念とした会社です。現在、スーパーマーケット、生協、居酒屋チェーン、飲食店などのお客様に向けての様々なサポートを実践しております。また、「令和の広島かき」をはじめとした水産系素材のビタミンやミネラルといった栄養成分を活用したサプリメントの開発を行っております。

屋号 合同会社イシュメイル
住所 〒116-0014 
東京都荒川区東日暮里3-26-10
営業時間 平日9:00-17:00
定休日 土・日・祝日
代表者名 小泉 龍人(コイズミ タツト)
E-mail info@ishmael.co.jp

コメントは受け付けていません。

特集