瀬戸内海東部のイカナゴ資源評価――2025年83トン、回復をどう見るか
水産庁は2026年10月2日、イカナゴ(瀬戸内海東部系群)を含む8種15資源の最新評価を公表しました。イカナゴの2025年漁獲量は83トンで過去最低となり、2026年の資源量指標値は前年より上がったものの、直近5年間では減少傾向と判断されています。
「前年より増えた」という数字だけで回復と判断できるのでしょうか。対象海域、長期推移、管理基準値案との関係を公表資料から整理します。

対象は「瀬戸内海東部系群」
今回の評価対象は、瀬戸内海東部の備讃瀬戸、播磨灘、大阪湾、紀伊水道に分布する群です。瀬戸内海全域を一括して評価した資料ではなく、広島湾を含む中・西部の状況へそのまま当てはめることはできません。
イカナゴは、水温が上がると砂の中に潜り、ほとんど活動しない「夏眠」を行います。夏眠する場所は冬の産卵場にもなるため、海底環境や水温を含む生息条件と深く関わる魚です。
2025年漁獲量は過去最低の83トン
漁獲量は1980年に7万2,765トンで過去最高となった後、長期的に減少しました。2017年には1,480トンへ急減し、その後も低水準が続き、2025年は83トンと過去最低を更新しました。
- 2025年漁獲量:83トン(過去最低)
- 資源量指標値:2025年の0.078から2026年は0.205へ上昇
- ただし直近5年間では減少傾向
- 2026年の資源水準:10.8%で、限界管理基準値案を下回る
前年より増えても「回復」とは限らない
資源量指標値には、兵庫県の代表漁協による船びき網漁業の単位努力量当たり漁獲量(CPUE)を標準化した値が使われています。2026年の0.205は2025年の0.078より高いものの、長期的な位置づけでは10.8%水準です。
単年の増加は重要な変化ですが、低い水準からの動きでもあります。評価資料は、漁期短縮により近年の不確実性が高まっている点にも触れています。少なくとも複数年の推移と調査データを重ねて見る必要があります。
ABC試算値は「来年の漁獲枠」ではない
資料では、異なる漁獲管理規則案を適用した場合の2027年ABC(生物学的許容漁獲量)試算値として、227トンと87トンの2つが示されています。これは、直近5年間の平均漁獲量と資源水準から、各規則案に沿って計算した比較値です。
ABC試算値は、2027年の実際の漁獲量を予測する数字でも、すでに決まった漁獲枠でもありません。研究機関が提案する管理基準値案・規則案の下で計算された試算です。管理方針の決定には別の手続きがあります。
瀬戸内海を一つの数字で見ない
水産庁が同日に公表した15資源には、サワラ瀬戸内海系群、ヒラメ瀬戸内海系群、マダイ瀬戸内海東部系群、マダイ瀬戸内海中・西部系群なども含まれます。同じ瀬戸内海でも、魚種や分布域ごとに評価単位と状態は異なります。
食卓に近い水産物のニュースほど、「瀬戸内海全体」「その魚種全体」へ結論を広げないことが大切です。資源評価における魚種と系群の違いは、当サイトの資源評価の読み方でも解説しています。岡山の牡蠣養殖と海の栄養環境については、岡山県の牡蠣産地の記事もあわせてご覧ください。
一次情報
本記事は2026年10月8日時点の公表資料をもとにした一般向け解説です。資源評価の値には調査・推定上の不確実性があり、将来の漁獲量や店頭価格を保証するものではありません。特定商品やサプリメントの効能・効果、安全性、優位性を示すものでもありません。
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