捕鯨と食文化を守る会に行ってきました
少し前になりますが「捕鯨と食文化を守る会」に行ってきました。4年ぶりの開催だそうです。
以前は憲政記念館でやっていたのですが、日比谷高校裏にある星稜会館で行われました。
憲政記念館は建て直しをしているそうで、利用できないようです。
今回は関係業者としてゲスト参加ができたため、正直ちょっと嬉しかった(もちろん有償です)。。
いつも大人気でなくなってしまうのが、太地町さんが提供するイルカの薄切り刺身とすき焼きです。
ようやく食べられました笑。独立前に太地町にある「白鯨」を個人的に訪れて、食べさせていただいた味わいが蘇ります。
収穫は、捕鯨に関してはオール与党体制で支援を頂いている点です。自由民主党の林官房長官や鶴保庸介先生、立憲民主党の野田元総理、国民民主党の玉木代表などの著名な方の参加がありました。野田元総理は自らの国際捕鯨委員会に参加したときの反捕鯨国への怒りの気持ちを表現していただき、熱が入った訴えをされていた点が印象に残りました。
政治による入力は、供給面では非常に心強いです。
ただ問題は、需要面です。政治家の先生を含め、そこにもっと関心をもって頂きたい点です。
三菱、イオングループやセブン&アイグループ、楽天市場などの大手日本企業が鯨肉の取扱いを許さない(撤去させる)状況は、真綿で首を絞めるように日常生活から鯨食の市民権を奪い去っています(イオングループは地方の一部で置いてくれていますが、カスミやマルエツ、いなげや、マックスバリュ等の子会社に対する目に見えない圧力・萎縮効果は一番強いようです)。
最近でも担当バイヤーレベルで鯨ベーコンの採用を模索してくれましたが、上からの明確なストップが入ってしまった事例があったようです。
たしかに国民の鯨食への支持や浸透は明らかに低下しています。中小から構成される鯨肉加工メーカーも高騰する原料価格と鯨食への無関心と需要の低さから思うような利益をだせておらず、閉業の選択や倒産する企業もでてきています。
あるいは、水産業界ではかなりの知名度から加工メーカーも、鯨加工事業から事実上撤退する動きをしているのも最近です。鯨加工業は他のサーモンなどの他の魚種に比べてボランティアに近いものだったようです。
反捕鯨団体の活動が盛んだった頃のほうが、その反発からの文化運動としての強さがありました。業界で活躍する人間の高齢化もありますが、生業(なりわい)としての適正な利益を生み出せないために業界の足腰が加速度的に弱くなっています。国の様々な支援策にもかかわらず業界が縮小している理由について、行政庁をはじめとした関係者は、消費者の近くにある生の情報を集めて向き合う必要があります。
まさに正念場。無関心との闘いです。
消費者との対話と理解の促進が求められます。実は、一番苦しい自分との闘いのはじまりのステージに立っています。今考えると、シーシェパードといった反捕鯨団体という「見える敵」のほうがむしろ御しやすかった感があります。
ところで、JR東海グループが発行していて、財界人が良く見ているwedgeという雑誌があります。
紙媒体は新幹線のグリーン車に無料配布されています。そのウェブ版に公開データを用いて捕鯨業界を分析した論稿が掲載されていました。知らないことが書いてあり、鯨肉在庫の問題など業界からしても耳が痛い指摘がありました。
※【商業捕鯨“復活”なるか?】ナガスクジラの対象拡大も、操業会社が抱える「時限爆弾」の実態
鯨の売れない理由は、
①鯨食に親しんだ団塊世代の人口減少
②下級部位を含めた鯨肉の価値が価格が見合っていない点
③政治的事件や供給減による度重なる供給不安
④イオングループを始め大手によるM&Aによる売場制約
といった要素に分解することができ、需要を喚起しづらい原因となっています。逆に、それらの対策に正面から向き合い、資源を集中投入し、政治および行政と業界、流通業者が真に一体になって取り組むことで、新たな難局を乗り越えることが可能になります。
特に、年を追うごとに食経験がある人が減る中で、鯨肉の値上げには強いインパクトがあります。
この点で、まぐろ、サーモン、牡蠣などの旺盛な需要がある商材とは異なる点です。需要減の中での価格の上昇は、体感的には10%UPは20%UP、20%UPは40%UPに近いイメージがありました。近年は、その分だけ供給減に合わせて販売量が大きく調整されました。
鯨肉は国の支援を受けている共同船舶が供給をほぼ一元的に供給しています。そして、鯨の価格は共同船舶が決めるのですが、様々な人の考えを聞きながら市場動向を調べながら慎重に行っています(たぶん)。
原料価格を上げれば短期的には供給減に合わせて平均単価を大幅に上昇させることが可能ですが、市場との対話を一歩間違えると在庫が積みあがるリスクがあります。様々な代替食材があふれ需要優位の状況においては、業界内外、消費者との対話こそ一番大事な作業になるのです。
消費者と近いスタンスで売上を上げることを迫られるのは、最前線にいるのは量販店バイヤーです。ところが、そのバイヤーが様々な食材が値上げされている中で、鯨肉の値上げは受け入れても、現実にモノが動かないと言明されています。このあたりに真剣な注意を払う必要がありそうです。
社会変化を受け入れる中で、適切な判断と政策を迅速に行うことができれば、価格以外の観点からも問題解決の糸口は見つかるはず。当社も微力ながら、あきらめずにがんばりたいです。