2026年秋のスルメイカ漁況予報――4海域で見通しが分かれる理由
水産研究・教育機構は2026年9月30日、同年10月から12月までを対象とする「第2回 太平洋スルメイカ長期漁況予報」を公表しました。見通しは海域によって異なり、北海道周辺の3海域では前年を下回り、常磐から三陸では前年並みと予測されています。
この予報は、海全体を一つの数字で表したものではありません。調査で得られた分布、漁獲効率、水温、直近の水揚げ状況を海域ごとに読み合わせたものです。公表資料から、予報の要点と読み方を整理します。

2026年10~12月、4海域の見通し
- 道東太平洋海域:来遊量は前年を下回る
- 根室海峡~オホーツク海:来遊量は前年を下回る
- 津軽海峡~道南太平洋海域:来遊量は前年を下回る
- 常磐~三陸海域:来遊量は前年並み
資料では、いずれの海域も1980年以降で見ると来遊量が低水準にあるとしています。そのうえで、2025年との比較では、常磐~三陸だけが前年並み、ほかの3海域は前年を下回る見通しです。
予報は何を根拠にしているのか
今回の予測には、2026年8月下旬から9月上旬に行われた漁場一斉調査とイカ類南下期資源調査、8月から一部9月までの漁況経過が主な情報として使われました。調査では、いか釣り機1台が1時間に漁獲した尾数を示すCPUEなどを海域別に比較しています。
さらに、スルメイカが来遊しやすい水温条件や、各海域を移動する群れの経路も考慮されます。単純に前年の水揚げ量だけを延長して予測しているわけではありません。
全体平均だけでは見えない地域差
いか釣り調査では、全29調査点のうちスルメイカが漁獲された地点は8点、割合にして28%でした。前年は30地点中13地点、43%です。一方、全海域の平均CPUEは前年を上回りました。
一見すると矛盾しているようですが、2026年は三陸海域の平均CPUEが前年を大きく上回った一方、道東や津軽海峡~道南では前年を下回りました。限られた地点で多く漁獲されると全体平均は上がるため、「平均が上がった」だけで広い範囲の来遊が増えたとは判断できません。
「来遊量」と「水揚げ量」は同じではない
来遊量は、ある海域へやって来る群れの量についての見通しです。実際の水揚げ量は、操業日数、漁船数、天候、漁場の位置、漁獲を抑える取り組みなどにも左右されます。
予報資料も、2025年は小型いか釣りの操業停止や、底びき網・定置網で漁獲を抑制した操業が行われたと説明しています。水揚げ量が前年を下回っていても、それだけで海にいる群れの量が前年を下回るとは限らない点に注意が必要です。
今回の資料は2026年10~12月の太平洋側4海域における来遊量の予測です。全国のスルメイカ漁獲量、店頭価格、個別商品の入荷量や品質を直接予測するものではありません。実際の状況は天候や操業条件などで変わる可能性があります。
長期的な変化と毎年の予報を分けて読む
資料によると、太平洋側の年間漁獲量は2007年から2015年に7万~16万トンで推移した後、2016年以降に大きく減り、2025年は推定2.4万トンでした。こうした長期傾向と、今年の秋にどの海域へ群れが来るかという短期予報は、関連しつつも別の情報です。
水産物のニュースを読むときは、「対象期間」「対象海域」「比較相手」「調査値か水揚げ値か」を確認すると、数字の意味を取り違えにくくなります。魚種と資源評価の単位については、当サイトの魚種と「系群」の違いを解説した記事も参考になります。知られていない魚の価値と食卓の多様性については、「魅了ギョ・プロジェクト」の記事で紹介しています。
一次情報
本記事は2026年10月4日時点の公表資料をもとにした一般向け解説です。漁況予報には不確実性があり、今後の海況や操業条件によって実際の結果は変わり得ます。特定商品やサプリメントの効能・効果、安全性、優位性を示すものではありません。